蓼科

 

蓼科ズレ

 

1962年6月

 

参加者   伊東 毅

 

6月8日

茅野駅(6:05)=樽ヶ沢(7:05)~寮(7:40)

 

 駅のベンチ、シュラフは暖かかったが、あまりよく眠れなかった。茅野の駅もずいぶん顔なじみになった。朝食はパン、6月からバスも樽ヶ沢まで入ってくれるのでありがたい。明治のW.V.が一緒に乗ってきて、いつもは2~3人のバスがいっぱいになった。八子から蓼科を越えるのだそうで20人余り、それでも、こちらのザックの方が大きかった。樽へは1人だけ、ようやく雨があがった道を寮に向かう。この前来た時とは大違い、周り中緑で、何かまだピンと来ない。この季節に来たのは初めてだが、ずいぶん景色が変わるものだ。途中で学校へ行く俊次くんと峯ちゃんと、送っていく俊平さんに会った。寮には、やはり誰も来ていなかった。朝ご飯をもらって、少し眠る。足が痛くて、あまり動けない。昼食に起こされて、空はきれいに晴れて、寮の周りも、とてもきれいだ。つつじは未だだそうで、ちょっと残念だけど、新緑が真っ最中、身体が痛いけど牧場まで行くことにする。六仙道を足を引きずって行くが、周り中、緑があふれて、空の青さと一緒になって、そのきれいなこと。カラマツもいいし、ブナも若い色でいい、白樺も白緑色の小さな葉がいい。バックが真っ青だからいいんだな。嬉しくて、嬉しくて足の痛いのも忘れて飛び上がる。牧場では、ちょっと登って、草の上に寝ころんで、いい気持ちになる。周り中光に満ちて、何て言ったらいいのか、とにかくきれい。蓼科がこんなにきれいで素晴らしくて、嬉しくてたまらない。ひとりでに顔がほころんでくる。光を体いっぱいに浴びて、空を仰いでいると、気持ちがよくなって昼寝。日差しが強く、上着もシャツも脱いで日光浴、まったくいい気持ちだった。今が一番いい時だろうか、昨日の雨で洗われて、花々も咲きだしている。小梨の白い花は少し散り加減、ぼけが咲いて、すずらんも咲いている。日が傾き始めるころ、またゆっくり歩いて寮に戻る。

 また一人っきり、夕飯にはウドの酢味噌和え、ウドの葉のてんぷら、わらびの煮つけ、山の味がたくさん、みんなおいしかった。そのほか朝はトトキというツリガネニンジンのお浸し、もう少しするとフキも出る。味の上でも今はいい時だ。それでも今ごろは来る人も少ないというから惜しいことだ。

 

6月9日

寮発(10:45)~池の平(11:25~11:55)~茅野(13:00~14:20)~新宿(19:10)

 

 早起き、また雨が降っている。晴れたら午前中に、また少し歩いてみたかったのに。今日は帰る日、残念だけどしかたがない。俊次君の自転車はニュー、毎朝樽ヶ沢まで、峰ちゃんは俊平さんの後ろ。クマが大きくなって、チビと変わらない。早い朝ご飯のあと主寮に戻って、お茶を飲んで出る。この前も帰るときに雨に降られた。番傘を借りていく。せんぎのほとりから振り返ると、雨の中に寮がきれいだった。短かったけど、いい蓼科だった。諏訪バスは時間通りに出ないので、汽車を一つ逃した。甲府で準急に乗り換え、家に着いたのは7時半。穂高から長かった。蓼科はいい、穂高の岩よりも、ずっといい。

 

費用  当日小計 720円

    バス茅野~樽ヶ沢120円、荷物代20円、みかん缶詰55円、

              キャラメル20円、寮宿泊費200円、バス池の平~茅野105円

    荷物代20円、蕎麦30円、新聞10円、パン30円、準急券100円

    電話代10円