オートルート10

f:id:shinnyuri2179:20220413174833j:plain

f:id:shinnyuri2179:20220413174844j:plain

f:id:shinnyuri2179:20220413174855j:plain





5月4日(水)晴れ時々曇り
休養、各自自由行動でツェルマット内外を散歩など。ツェルマットはマッタータールの深い谷のどんづまりの村。マッターホルンがなければどうしようもない寒村だろう。我々の宿がほぼ町の中心にあり、駅から教会までの間に土産物などの店が並んでいる。大小のホテルのほか、町の周囲にはホリデーアパートメントという4~5階建ての建物がいっぱい立ち並んでいる。夏山などのシーズンにはこういうところも一杯になるのだろうか。町で土産物を見たり、教会の前にある墓地で山で死んだ人たちの墓を見たりして過ごす。ウィンパーのマッターホルン初登頂の下りでザイルが切れて死んだと言うミシェル・クロの墓もあった。その後、マッターホルンと町が見える高台に登って写真などを撮ったりしながら、一人でぶらぶらしていた。
夕食は駅前のイタリア料理、木邨推奨の店だったが、どうやら隣の違う店に入ったようで味はともかく値段もちょっと良かった。

 

f:id:shinnyuri2179:20220413175002j:plain

f:id:shinnyuri2179:20220413175014j:plain

f:id:shinnyuri2179:20220413175023j:plain

f:id:shinnyuri2179:20220413175032j:plain

f:id:shinnyuri2179:20220413175042j:plain

f:id:shinnyuri2179:20220413175053j:plain

f:id:shinnyuri2179:20220413175101j:plain

f:id:shinnyuri2179:20220413175113j:plain



5月5日(木)晴れのち小雨
ツェルマット駅発(9:30)~チューリッヒ着(14:00)

帰国は6日の13:05チューリッヒ発で、早朝ツェルマットを出れば間に合うのだが、それでは大変なので、大谷と同じように1日前に移動することにした。朝、ツェルマットの駅でフライ・レール・ゲペックを利用して荷物を成田までダイレクトに送ろうとしたが、受付は飛行機の出発の24時間前からということで受け付けてもらえない。それでは、ということでライゼ・ゲペックと言う昔のチッキのようなシステムでチューリッヒ空港駅まで送ってもらう。スイス鉄道ならではのシステムで、スキーとスーツケースがなくなって、ザックひとつだけで移動出来るのがありがたい。
列車はツェルマットを出るとマッタータールの渓谷沿いに高度を下げていく。木々が芽吹いて、新緑が目にやさしい。ブリークで乗り換え、チューリッヒ行きの急行、ベルナーオーバーランド山塊の西側を通るので車窓に注目したが、残念、雲に隠れて上の方は見えない。でも景色は素晴らしい、緑の牧場、牧草地など田園が広がり、農家のたたずまいも景色に調和して、どこを見ても絵になるのは、さすがスイスだ。車内販売のワインをやりながら、全く退屈しない。やがて首都ベルン、緑の中に赤褐色の屋根の落ち着いた建物が並ぶ、時間があれば下りて散策してみたい街だ。
そしてチューリッヒの駅に到着、さすがにスイス第一の都会、広く大きい。まず駅構内の案内所に行って、今夜の宿を探す。ホテルのパンフレットが並んでいるので、安くて良さそうなところを見つけて電話を入れる。駅から遠くない2ッ星のホテル2軒に目星をつけ、街に出た。駅からリマット川の橋を渡ってチューリッヒ湖の方に向かうとホテルや商店の入ったビルが並ぶ一角になり、その中の1軒。部屋を見せてもらったが、5階建てでエレベーターがない、トイレ・シャワーが共同、これはちょっと遠慮したい、怱々に退散、2ッ星だとこんなものか。出てすぐのところで、何となく良さそうなホテルを見つけ、飛び入りで交渉、部屋は2人用、3人用が空いているという。案内してもらうと、なかなか綺麗で良さそうである。もちろん、トイレ・シャワーは専用、料金も朝食込み9000円ちょっと、ここに決めた。ホテル・アドラー、3ッ星だった。木邨・益崎・中澤で3人部屋、藤原と伊東が2人部屋に入った。
やれやれ、今日の宿が決まって一安心、荷物を置いて街に散策に出る。ホテルの前は石畳の雰囲気のいい街角になっていて、周りには小さなホテル、飲食店、バーなどが並び、風俗風の店もあって、どことなく下町風である。教会や大学も近くにあって、古い盛り場のようだ。チューリッヒ湖から駅前通りまでひと回りしてきたが、キリスト教の祭日とかで商店は軒並みクローズ、開いているのは飲食店だけだった。
ホテルに帰って一休み、階段の踊り場にインターネットの出来る端末があったので、ホットメールを開いてみたらメールが入っていた。どこにいても、メールが出来るのがホットメールのいいところだ。すかさず返信のメールを打とうとしたが、さすがに日本語変換は出来ない。仕方がないのでローマ字表記にした。これでも通じるだろう。帰国してメールを開いたら、ちゃんと受信した旨、返信が入っていた。
この後まだ時間があったので、もう一度散歩に出る。今度は坂の上のチューリッヒ大学、アインシュタインが学んだとか。高台でチューリッヒの街並みが見渡せる。教会の尖塔がたくさんある、大きな街だ。行き帰りの石畳の坂道がなかなかいい雰囲気だ。時々小雨が降る中そぞろ歩き、街路樹のマロニエの花が満開、ほかに藤やライラックなどなど、知らない花もたくさん咲いていた。
夕食は宿の並びのイタリア料理、スパゲッティ・ファクトリーと言う店。最初その向かいの店が良さそうなので行ってみたら、すでに満員だった。入った店もほぼ満員、運良く1テーブルだけ空いていた状態。人気の店なのか、祭日で客が多いのか。ワインに銘々好きなパスタを注文、シーザースサラダとカルボナーラを頼んだが結構な量で満腹、味も良かった。


5月6日(金)曇り時々小雨
朝起きて、またチューリッヒ大学へ散歩、天気が良ければチューリッヒ湖の向こうにアルプスが見えるかと思ったのだが、あいにく厚い雲がかかっていた。朝食はバイキング、種類多く、美味しかった。9時にホテルを出て、チューリッヒ駅へ。空港を通る列車は次々に出る。ミュンヘン行きの列車で空港駅下車、まずライゼ・ゲペック窓口で昨日預けた荷物を受け取り、次はスイス・エアのカウンターでチェックイン、そのままスキーとスーツケースを預ける。これでまた身軽になり、空港の売店で最後の土産を買い込んだ。
13時5分、ほぼ定刻に離陸、帰りはさすがに満席だった。時差ぼけにならないようにと極力眠ろうとしたが、じっとしているとエコノミー症候群になりそうで、思い通りにはいかない。
スイス・エアもルフトハンザに身売りしてサービスが悪くなったようだ。機内食もお粗末だし、座席の映像モニターの調子が悪く映画が見られない。乗務員の対応が不十分だから怒り出した外人客もいた。連休の終わりの便、身動きもままならない12時間はつらいが、我慢するしかない。

5月7日(土)
7時50分成田着、解散。スキーとスーツケースを宅急便に預け、新百合ヶ丘直行バスで帰宅。

まとめ

中でも書いたが、オートルート完走、ブライトホルン登頂と目標達成。天候とガイドに恵まれて予期以上の成果を上げることが出来た。天候などで途中断念とかルート短縮などを余儀なくされるパーティーもある中で、初めてのトライで成功するとは幸運という以外にない。
初めてのガイドつき登山、いろいろ勉強することもあり、面白かった。ほかのガイドを知らないのでなんとも言えないが、キムは若いがしっかりしていて頼りがいがあった。もっと早く歩け、休むな、などと言われることもなく、終始我々のペースで歩かせてくれたし、休憩も出来、水や行動食も自由にとれた。もちろん、危険な場所や早く通過したいところなどは我々にも分かるので、キムに言われる前にそうしていたこともあるだろう。キムにしてみても、スピードはないが着実に歩くし、山を知っているところから余り世話の焼けない、いいお客だったのではないか。
ただ、自分の判断、自分の力で登っていない、という物足りなさは残る。言われたとおり歩き、滑ればいいのだから、考えることもない。人に連れて行ってもらう山登りは新人の時以来のことで、それ以後はいつも自分で考えて登ってきたので、相当違和感はある。山登りの楽しさの半分が失われるような気がする。とは言え、氷河のある山ではガイドがいなければ身動き出来ないのだから、しかたがない。我々の力では国内の山を楽しむことは出来ても、海外ではそうはいかない。海外の山はそういうものだと割り切って行くしかないのだろう。この年になっては、自分たちだけで登れるような力をつけたり、経験を積むことなどは不可能なのだから。残念ながら連れて行ってもらうしかない、ということだ。
振り返ってみて、体力、技術の面でオートルート自体は特別厳しくもないし、難しくない。もちろん、ガイドの保護下という中でだが、終始体力には余裕があったし、スキーの技術も問題はなかった。事前のトレーニング、低酸素トレーニングも有効だったようだ。高度については、初日アルジャンチェール小屋で軽い頭痛が起きたが、2日目以降は感じなくなった。体調も最初、股関節が痛んだり、胃の調子が良くなかったりしたが、これも2日目以降は問題なかった。そうは言っても、天気に恵まれ条件的には最高だったわけだし、年齢を考えると全体的にはこの辺のレベルが我々には丁度いいのかも知れない。ちょっと余裕があって山を楽しめるというくらいが望ましいので、これ以上になると充実感はともかく、楽しさがなくなってしまうかも知れない。
雪質は特別良くも悪くもなかった。季節的にパウダースノーは期待出来ないがザラメもない。天気が良かったので新雪もなく、基本的にみんな同じところを滑るので踏み荒らされた荒れた雪を滑らされることが多い。日本でのように踏まれていない斜面を探して滑ることは自殺行為につながる。従って滑降そのものを楽しむという気分にはならなかった。むしろ、安全に転ばないように、距離が長いので疲れないように省力型のスキーになる。スキーとしては物足りないかも知れないが、それを補って余りある自然の変化、雄大な景観がある、山スキーとはもともとそういうものだろう。
同期6人が揃って行けて、うち4人だが気の合った仲間で行けたのだから、これ以上のことはないだろう。準備全般、面倒な交渉を引き受けてくれた藤原はじめ、みんなに感謝。