オートルート8

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5月1日(日)晴れ
起床(4:15)朝食(5:00)ヴィニェット小屋発(5:36)~レベークのコル(7:36)~オート・アローラ氷河カール底(8:05)~モン・ブルレのコル(9:40~10:00)~ツア氷河大雪原、シール着(10:15~10:25)~ヴァルプリンのコル(12:10~12:40)~シュターフェル・アルプ河原、昼食(14:10~15:10)~フーリー(16:00)~ツェルマット(16:30)

朝飯前にパッキングなど全部用意するために4時15分に起きる。5時一番に朝食、あっと言う間に食べ終わり、トイレ直行。泊り客が多い上に、みんな朝早く出ようと思っているから、立ち遅れたら終わりである。幸い即、個室を確保したが、食べてすぐでは意のままにならない。でも外の行列を思うと長居は出来ない、不十分ながら中途打ち切りを余儀なくされた。
5時半ではまだ暗い、リヒトをつけて一番に小屋を出る。雪はまだガリガリである。まず狭い尾根を渡ってヴィニェットのコルに出、昨日のセラック下のトラバースを逆に戻って、そのまま広いシェルモンターヌのコルへ滑り降りる。ここでヤッケの中に入れておいたシールをつける。まだ山々は黒いシルエットだが空は少しずつ明るさを増す。リヒトはもう要らない。モン・コロン氷河をレベークのコルを目指す。南東の方向なのでコルの上の空は明るい。今日もいい天気だ、下弦の月が薄くなり、山々に陽が当たる。モン・コロンの稜線が赤くなり、振り向くとピンダローラがモルゲンロートに染まっている。
一番に出た我々に元気な外人たちが追いついてくる。追いつかれると1歩横に道をあける。どんどん抜かれたが、まずは順調にレベークのコルに到着。シールを外し、また首に巻いて滑降。今日はこれを3回繰り返すことになる。ほんの少しイタリア領を通り、オート・アローラ氷河を滑って行く、大きなカールの底のような雪原に出て、またシールをつける。ここを左に下りていけばアローラの村やベルトル小屋に出る。
右に緩い登りで今度はモン・ブルレのコルへの急斜面の下に達し、ここでクトーをつける。この登りは150mちょっとだが、かなり急な上、斜面の途中に岩が露出しているので、スリップ・滑落したりしてこの岩にぶつかると大変である。斜登行、キックターンの連続、雪が固いのでバランスを崩しやすい、スキーを脱いでキックステップで登る人もいる。ここでキムが目覚しい働きを見せた。キックターンする曲がり角で我々一人一人のスキーのテールを手で持って返す手助けをしてくれる。例の山回りキックターンでだいぶん練習したけれど。この急斜面ではまだ谷側のスキーを返すのが難しいので、大いに助かった。ちょっとテールを叩くだけだが、うそのようにテールが返ってくれる。それも一つの角で4人のターンを済ませると、急いで次の角までトレールのない斜面を駆け上がり、また助けてくれる。こうして次々に走っていくのだから大変である。木邨の記憶では18回もあったと言う。昔、新人の雪上トレーニングで似たようなことをやったが、こんなに長い距離を走ったりはしなかった。さすがガイドである、体力・技術とも段違いのところを見せてくれた。
おかげで無事モン・ブルレのコルに到達、次はオート・ツァ・ド・ツァン氷河に下る。ここはイタリア領である。氷河は広いが右半分がアイスフォールになって切れ落ちている。最後の登りになるヴァルプリンのコルが見えているが、まだまだ遠い。天気が良く暑くなってきた。今日はTシャツ一枚、バンダナ鉢巻。一緒に歩いていた外人たちはどんどん先に行く。キムもペースを落とさない、益崎と木邨も元気でどんどん行ってしまう。フジクニと二人、最後の登りを楽しむようにゆっくり行った。朝のキジ打ちが不十分だったため腹の具合が落ち着かない。この登りの途中、斜面に大きな岩が転がっているところがある。地形から見てここにはクレバスがなさそうだ。幸いみんな先に行ってしまったので丁度いい、この岩陰でキジ打ちの補足をした。広い氷河の真ん中での野キジ、天気はいいし、眺めはいいし、いい気分だった。そんなわけでヴァルプリンのコルに着いたのは、みんなより10分以上も後になった。
コルに近づくとマッターホルンが見える、ダン・ブランシュが見える。先に着いたみんなが雪の上でのんびりしている。とうとうここまでやってきた、あとはこの先の谷を下るだけだ。写真を撮り、行動食を食べるなど30分休憩。ここでシールは御用済み、ザックにしまって最後の下り。まずシュトッキ氷河、左側を滑って行く。傾斜も手頃、雪も悪くない、緩斜面に出て右にカーブ、急斜面を下りてティーフマッテン氷河に入る。マッターホルンの西壁が正面、キムは時々立ち止まってこの凄い景色を見る時間をくれる。シュトッキの岩沿いから右にトラバース気味にツムット氷河に入ると今度は右岸、マッターホルンよりを滑る。ツムット稜の末端を過ぎ、北壁の真下に入っていく。
この辺まで来ると雪は腐って余り滑らなくなるが、北壁の下に入ると日陰のためガリガリでスキーは良く滑る。頭の上には北壁下部の氷河の末端がオーバーハングのようにせり出している。青い氷が厚さ数十メートルはあるだろう、あれも1センチ1センチ、ずり落ちているはずで、いつか落ちてくるのは間違いない、まったく恐ろしいところだ。キムは止まるな、と言って飛ばしていく。言われなくても、こんなところでは止まりたくない、スピードを落とさず、どんどんトラバースして行くが、このトラバースが長い。地図で見ても2~3kmある。ようやく北壁の氷の下を抜け、再び陽が当たるところへ出た時は、やれやれ、である、全行程中ここが一番恐ろしかった、と言っていいだろう。そう言えば、途中の小屋でツェルマットから来たガイドから、マッターホルンの雪の状態がいいと聞いて、キムが喜んでいたが、それがここのことを指して言っていたのかも知れない。
左側のツムット氷河下流は雪がなくなり、ガラガラの河原のずいぶん荒れ果てた感じになっている。我々のいるこちら側も北斜面だが雪が薄くなってきた。雪のあるところを拾って滑って行くが時々、岩が出てソールを削る。そのうちブッシュも出てきた。河原にダムのような水溜りが見え、コンクリートの建造物の先までしぶとく滑っていたが、ついに雪がなくなり、道路が現れた。ここはシュターフェル・アルプというところらしい、もう危険なところはない。近くの丘に腰を下ろし、残っている食料を全部出してビッグランチとなった。パン、チーズ、サラミなどたっぷり食べて、暖かい日差しの下、横になって昼寝をした。マッターホルンの北壁が大きく、その右に滑って来た谷が見通せる。みんな満ち足りた表情だ。キムも無事仕事を終えてホッとしているようだ。
1時間ほど休んだあと、ロープウェーのあるフーリーまでの最後の下りに出発。ここでキムがスキーをザックの本体に横に乗せて雨蓋で押さえる付け方を教えてくれた。どちらかと言うと間に合わせの、ずぼらな付け方だが簡単でいい。スキーが横になるので街中など狭いところでは危険だが、障害物のない山中では有効である。そのいい加減さ・手軽さから来たのか名づけてイタリアン・スタイルと言う。でもここからフーリーまではまだ4kmくらいある。歩くのは大変だなと思ったら、小さな丘を越えたところで再び雪のついた道路に出て、そこからまた滑っていくことが出来た。雪解けで水溜りのような雪だが、滑れるだけありがたい。
林道のような道を滑って行くと左側のツムットバッハが深い谷になり、前方にツェルマットの村が見えてきた。どこからかアルペン・ホルンの音色が聞こえてくる。そういうことはないだろうが、まるで我々の到着を歓迎してくれているようで、いい感じだった。フーリーの手前のレストランで一緒にオートルートをやってきたグルノーブルのパーティーが祝杯を上げていた。その前をお互いに声をかけ、手を振りながら滑りぬける。そして16時、フーリー2427mに到着、たくさんスキーヤーがいて、ここはまさしく下界である。ゴンドラでツェルマット1867mまで下りて、そこで一旦キムと別れる。明日1日休んで、明後日ブライトホルンのガイドをしてもらうことになっている。
駅には大谷と中澤が待っているはずだが見当たらない。携帯で連絡したら一段下の川沿いのところで待っていた。6日ぶりの再会、TUSAC旗で写真を撮ったあと、循環バスで街の中央に向かい、ツェルマットの宿、テスタ・グリジアに入った。ここはフジクニがやはりネットで探した2ッ星のホテル、4人部屋を2つ借りて3人ずつ入る。小さいが設備はちゃんとしているし朝食も美味しかったので、これで十分である。シャモニーのガイド組合に託した荷物は既に着いていた。これで汗臭いシャツや下着を替えられる。
夕食はホテルのフロントに聞いた向かいの4ツ星ホテルのレストラン、バリザー・カンネという店。コンソメ・フォンデューとサラダとスパゲッティー、それにデザート、6人で400chf。コンソメ・フォンデューはサイコロ状に切った肉をフォークで刺して沸騰したコンソメスープにつけて食べる料理、なかなか美味いが値段もいい。シャワーを浴びて久しぶりにキジ打ちの心配をしないで眠った。