0703八ヶ岳西面


参加者  浜野宏明   木邨光宏   大谷尚史   片岡ひとみ   伊東 毅

3月23日

夕方、鉄驪荘へ仕事の関係などで夕方発、いい天気でうららかな陽気だが明日以降下り坂という予報。鉄驪荘では翌日を考え、早めに切り上げて就寝。

3月24日
起床(4:30) 鉄驪荘発(6:10)=美濃戸(7:05)~赤岳鉱泉(9:10~10:05)~行者小屋(10:40)~
斜面取り付き2480m (11:30)~地蔵尾根ルート2560m (12:40)~遭難者発見2530m (13:00)~下降開始(15:50)
~行者小屋(17:00)~赤岳鉱泉(18:15)

鉢巻道路から美濃戸へ、赤岳山荘の駐車料1日1000円、2時間で鉱泉着、部屋は2階のベッドルーム。明日の天気が期待出来ないので、とりあえず赤岳だけでもと地蔵尾根を目指す。ところが浜野さん不調で中山乗越でリタイヤ。さらに行者小屋からの分岐を見落とし、一本先の沢の踏み跡に誘い込まれてしまう。おかしいと気がついたが、なんとかなるだろう、とそのまま進むが、このまま行くと赤岳西壁の一部にぶち当たってしまうので、左の尾根にトラバース出来そうなところを探す。ここで片岡さんも体調不良でバック、残るは3人、かんばがまばらに生えた雪壁に取り付いたが、最後傾斜がきつくなり、1ピッチザイルを出した。出たところは地蔵尾根の一般ルートまでほんの一投足だった。そこでザイルを収容しているうちに先行した木邨、大谷が会った若い女性が連れがいなくなってしまったと言っている。その時は特に重大には受け止めず登り始めて間もなく、件の女性が下から必死に呼びかけてくる。下りてみると、連れが落ちていると言う、見ると尾根の右側の沢の雪面に人が倒れている。ザイルをつけて行ってみると顔から血を流しているが意識はある、背中を打っているらしく全く動けない。これはまさしく遭難である、救助しなければいけないが、さてどうするか、初めてのことで何をどうすればいいのか、とっさのことでもあり、筋道立てて考えるような余裕がない、とりあえず安全の確保と連絡か、と思い、伊東は現場に残り、木邨に行者小屋に走ってもらう。場所は沢の真ん中だが傾斜は緩く、これ以上落ちる心配はない。50mほど上は岩壁だが上から雪崩や落石もないようだ。そのうち地蔵尾根を下りてきたパーティーが続々集まり、救助に参加する。みなヘルメット、ハーネスをつけ、ザイルを持っていて、技術・経験とも十分ありそうな面々だ。全部で20人近くいただろうか、中に文登研の講師をしているという人がいて、救助の経験もあるというのでリーダーシップをとってもらう。背骨を痛めているかも知れず、へたに動かせないので、まずは寒くないように保温して救援を待つしかないと、ツエルトや防寒着をかぶせる。一方携帯で警察に連絡、ヘリの出動を要請するがなかなかいい返事が来ない。天気は下り坂だが、まだ雲は高く十分飛べると思われるし、現場上空は比較的あいているのでヘリで吊り上げは可能かと思われたのだが、そのうち松本空港の天候悪化でヘリは飛べないと言ってきた。この間木邨は行者小屋にいた赤岳鉱泉の人に伝言して戻って来たが、鉱泉からスノーボートを上げてもらうため、もう一度下りてもらった。また大谷は連れのメッチェンが動転しているので、鉱泉まで同行して下ろした。地上から救援隊が出たと言っているが、茅野から来るので遅くなってしまう。天気が崩れるのは間違いないし、この場で夜を迎えては体温低下を避けられず、助からなくなるということで、皆で下ろすことにする。ツエルトとマットで簡易な担架を作り、ザイルをかけて現場の沢から地蔵尾根のルートに戻し、急斜面を少しずつ下ろす。人数がいるのが心強い、途中まで下ろしたところで赤岳鉱泉若い人たちと木邨がスノーボートを持って到着。そこでスノーボートに乗せ換えて行者小屋、さらに中山乗越を越えて赤岳鉱泉へ、途中で地元の遭対協も合流、鉱泉では茅野警察の署員もいて、そこでバトンタッチ。あとは遭対協と警察が美濃戸から諏訪の病院へ運んだ。鉱泉に着いた時には薄暗くなっていたが、なんとか下ろすことが出来てほっとした。その後病院で診察の結果、左腕の骨折、全身打撲だが命に別条はないと言う。技術未輌で事故を起こしたが、落ちた場所が良くて致命傷を受けず、多くの登山者が救出にあたるなどラッキーだった。というわけで一日終わり、その夜はふけてから大雨、一晩中屋根を叩く音がしていた。こんな中でビバークしていたら大変なことになっていた、今日下ろせて良かったととあらためて思った。

3月25日
下山=富士見鹿の湯=おっこと亭=鉄驪荘泊

朝も降っていたが、小雨になったので下山、念のためアイゼンをはいた。表面の雪が流れ氷が出てツルツル、大正解だった。美濃戸からの林道も氷のため先に出た車がスリップ、JAFが来るまで2時間近く待たされた。富士見高原の鹿の湯、ここは露天はないが広くていい、500円。おっこと亭のそばもうまい。もともと、鉱泉にもう1泊する予定だったので鉄驪荘で宴会、のんびりさせてもらう。

3月26日
帰京
ゆっくり帰京、天気も悪く遭難救助でどこにも登れなかったが、得がたい経験をした山だった。