秋山南ア縦走

 

1962年10月

 

参加者   高井延幸 成相恭二(OB) 岸 洋一 池戸誠二郎

                      藤原国生 野原 光 大坪秀臣 伊東 毅

 

10月1~2日

東京発(18:41)=金谷(22:47~5:45)=千頭(7:00)=畑薙(10:15)~吊り橋(11:50)~ヤレヤレ峠(12:45)~飯場(13:10)~石小屋(15:50)~元山下(17:00)幕営 就寝(20:30)

 

   東京駅,夕発、秋山第一陣なので、見送りがたくさん来てくれた。時間が早いのであまり眠れない。金谷に着いて駅の待合室に入り、シュラフを出して眠る。少し暑いくらいだったが、結構眠れた。起きてパッキングしなおして、大井川鉄道に乗る。割といい電車だ。千頭で乗り換え、小さな気動車、寝たり覚めたりしながら井川に着く。またバスに乗って、大井川沿いの道、のんびり走る。終点、畑薙ダムサイトで下りる。少しバスに酔って気分が悪い。なんとも暑い日だ。

 昼飯を食って、いよいよ出発、ダムを渡って左岸の広い道を行く。相当速いピッチ、1ピッチで吊り橋に着く。荷物はようやく10貫くらいだろう、特に重くないが、鍋なんか背負わされた。吊り橋は長くて、グラグラ揺れて、下のダムの水が真っ青で怖かった。渡って急な斜面、一息登ってヤレヤレ峠。それから山腹をうねって、上河内沢に下りる。飯場の上で休憩。沢沿いの道で大坪が少しバテ始める。野原のラジウスの石油が漏れたようで匂ってくる。元山までもう少しのところ、沢の右岸の、丁度天幕1つが張れるプラッツで、もう遅くなってきたので幕ることになった。エッセン番は岸さんと野原、伊東、火付けは乾いていたので簡単、カレーライス、肉がたくさんあって美味い。秋山第一日の夜、シュラフから半身を出して眠るほど暖かかった。

 

10月3日

起床(5:00) 出発(7:00)~飯場上昼食(10:00~10:40)~茶臼小屋・幕営(11:40~12:30)~

茶臼岳(13:00)~仁田岳分岐(14:10)~易老岳(15:10)~仁田岳(17:05)~帰幕(18:25)

就寝(20:30)

 

 エッセン番もつらくない。朝飯食ってパッキング、出だしから沢を離れ、山腹を急な登り、尾根を越して向こう側が元山の飯場飯場がなければいいところだ。ひと休みして、尾根の急登が続く、樹林帯だが小枝を漏れる陽が、やはり暑い。天気はいいので富士が見える。上の飯場で昼食後、1ピッチで茶臼小屋に出る。きれいなところだ。周りが紅葉、東面が開け、富士が見える。小屋下のプラッツに天幕を張る。水場はすぐ下。

 張り終わって、光方面に散策に出る。稜線まで20分くらい、茶臼の北コル、風が強い。紅葉がいい、ダケカンバがまっ黄色。茶臼へひと登り、、空身だとまったく楽だ。急な下りを仁田池へ、ここもいいところだけど、池の水はあまりきれいじゃない。平らな稜線、その途中で休んで、日射しの中で昼食。いい気分で楽しい。仁田岳の分岐まで軽い登り、それから下りに下って北八ッや奥秩父のような林の中、平らな稜線を、どんどん歩く、光は遠い。倒木はあまりない、途中で休み、ここで今日のエッセン番は先に戻る。残りは易老まで。易老の頂上は枯れ木が多い、あまり面白くないところ。少し寒くなってくる。ここからバック、帰りに主稜線を外れて仁田岳まで行ってみる。風が強く、ガスが飛ぶ。山頂は砂礫とハイ松、夕日を受けてブロッケンを見た。虹が出る、夕暮れ迫る。茶臼を越えた頃は大分暗くなって、なかなかムードがあった。飯はまだ出来ていなかった。少し寒気がしたが、事もなく済んだ。今日も暖かい。

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10月4日

起床(6:00) 出発(7:30)~御花畑(8:10)~竹内門(9:05)~聖平小屋(11:45)

 

   今日は聖平まで、半日行程が続く。天気はあまりよくない、風が強い。稜線に出ると、なおのこと強風にさらされる。昨日の明るさは全くない。ガスが激しく飛ぶ。御花畑の稜線はポンカラ、ポンカラ、楽しいだろうと思っていたのに残念。上河内の登りでついに雨が降り出した。雨具をつけて歩く。雨風強く、ビニールシートを被っているくらいでは全然ダメ、吹きまくられてシニシニである。やはりレインコートが最も有能のようだ。上河内岳は山頂を捲く、樹林帯に入るとホッとする。懸念された倒木も整備されていて、楽に聖平の小屋に着いた。雨にぬれ、これから幕営するのは大変なので、不本意ながら小屋に泊まることにする。濡れ物を脱いで毛を着る。飯を食うと暖かくなって落ち着く。

 今日のエッセン番はわれわれ、濡れた薪を燃やしてやろうとファイトを燃やす。じっくり構えて、粗朶をたくさん作って、堂々火をつけた。それでも湿っているので、続けざまに、あおぎ立てなければならない。目が痛くてならない。でも、その甲斐あって、最高にうまい飯が炊けたので、いい気持だった。

 明日も天気はだめらしい、沈殿するとそれだけ歩けなくなる。次は半日行程はきかない、どうしても百閒洞まで行かなければならないのだから。

 

10月5日

起床(3:30) 待機 停滞決定(8:00) 雨あがる(9:30)

 

 雨である、沈殿。飯食って寝るだけ。雑談となると大坪の独擅場、野原が感嘆することしきり。岸さんが調子悪く元気がない。池戸さんが一人で聖沢を下降、今日は誕生日だそう。雨も止んで、明日こそは動けよう。

 

10月6日

起床(4:30) 出発(6:35)~アザミ畑(7:20)~水場標識(7:50)~小聖(8:20)~聖岳(9:45)~兎岳(12:10)~中盛丸山(13:40)~百閒洞(14:40) 就寝(19:30)

 

    堂々の天気、一日半の休養で元気いっぱい。青い空に聖が大きく、紅葉が美しい。アザミ畑から光、易老方面がいい眺め。2ピッチで小聖に着く。風が強くジャンパーを着る。ジグザグのザレ道、1ピッチちょっとで聖に着いた。意外にあっ気ない。あれだけよかった天気だが、ガスがかかってきて赤石は見えない、残念。ちょっと休んでまた出る。ザックは軽く快調な山歩き、兎とのコル少し上で昼食。東大のワンゲルパーティに会う。百閒洞が見える。コルから兎までは1ピッチ強、兎の頂上直下に割と感じのいいプラッツがあった。兎の下りも感じのいいところ、この辺はポンカラ。下りきったところでWACに会った。

    中盛丸山なんて本当にへんてこな山だ。稜線ににょっきり、やたら急なとんがり帽子をおったてて、捲き道もないし、まったく人を馬鹿にしたような山。登りは急でしごかれる。それでも、こんないたずら坊主みたいな山は面白い。大沢岳のコルから、百閒洞のまき道に入る。ダケカンバの間の道、急降下、相当に長い。樹林帯に入って、ひとしきり急な下り、ようやく百閒洞山の家に着いた。テントプラッツは沢の上の方。今日はエッセン番、なす焼きがうまかった。明日は成相さんと2人で別行動、みんなといる夜も、これが最後、さよなら晩餐会。アインツヴァイの腕が競われる。

 

10月7日

起床(4:00)  出発(6:30)~赤石岳(8:35~9:00)~荒川小屋(10:00~10:35)~荒川岳肩(11:15~11:35)~荒川中岳(11:50)~悪沢コル(12:15~12:20)~悪沢岳(12:40~13:10)~千枚岳(13:45~13:55)~二軒小屋(17:00)

 

 ガスのかかった天気、今日は荒川から二軒小屋へ下りる。他のみんなは縦走を続け、北岳まで。さよならである、元気でがんばれよ。成相さんと2人、個人装備だけの軽いザックで、どんどん歩く。まだ寒い、百閒平への道は風が強い、振り返ると下の方にみんなが見える。百閒平はいいところだ、平らないい道を、こんなところにテントを張りたいなと思いながら、赤石へ。霧氷がついてきれいだが寒い。広河原が見える。赤石はガスの中、聖も見えない。西風の中、赤石は南側に回り込みながら、ガラガラの道を登る。山頂付近はガスのため、どうなのか分からなかったが、ガスの切れ目にヤグラを見つけ、山頂に立つ。氷がついて冬景色のようだったが、ガスが飛び始めて富士が見え出す。青空が出る、どんどん晴れて、荒川が豪快な姿を見せる。中アも見える。Schonである、DoDoである。

   記念撮影の後、また下り、大聖寺平は、またのんびりといいところだ。荒川がいい眺め、写真など撮りながら、ポンカラ歩く。荒川小屋へ。平らな道を大捲き、小屋の前、日向ぼっこしながら昼飯を食う。楽しきかな。荒川の登りはジグザグの日当たりのよい道。大聖寺平の下り付近に人影が見えたが、TUSACか否か?Callするも届かないのか応答なしだった。荒川(中岳)に登ると、塩見、白峰がよく見える。三つ目の3000m峰、四つ目の3000m峰、悪沢はすぐそこだ。

   歩きよい平らな道から、ガラガラした下り、この辺は、なんだか明るくて、それほどの高峰にいるとは思えないような、のどかな感じ。悪沢の登りは岩の間の急登だが、大したこともなく頂上へ。ここで2回目の昼食。あとは登りなし、一気に1700mの下りだ。靴紐を締めなおして下りにかかる。下りに下る、テケテケ下る。千枚を過ぎ、樹林帯に入り、下って休み、休んで下り、長い長い。二軒小屋のダムが見え始めるころ、樹林帯の中にツエルトを張っていた平松さんに会う。二軒小屋は気分が悪いから上がってきたとか、これから光まで行くのだそうだ。頑張ってください、一人なんていいな。

   二軒小屋へはすぐ、怖い吊り橋を2つも渡って、浜田屋前に着く。いくら取られるか気懸りだったが、幸い大分安く泊めてもらえる。割とさっぱりした小屋に入って一息。ビールで乾杯、飯を食ってゆっくり眠る。

 

10月8日

二軒小屋~転付峠~新倉

身延経由帰京

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