三ッ峠

 

1963年2月

f:id:shinnyuri2179:20200608141636j:plain

f:id:shinnyuri2179:20200608141651j:plain

f:id:shinnyuri2179:20200608141703j:plain

 

 

 

1963年2~3月

 

参加者   池戸誠二郎  岸 洋一

  伊東 毅   大谷 尚史  大坪英臣  木邨光宏  中沢新吾

  藤原国生   益崎健二郎

 

2月28日 晴れ

新宿発(7:05)=三ツ峠駅(10:20~10:50)~屏風岩下・幕営(14:45~15:30)~岩登り(16:00

~17:20)

 

 伊東、大谷、大坪、藤原、益崎の1年生5人が出発、木邨は遅刻して、ダルマ石前で追いついてきた。白雲荘は営業していなかった。岩場下の平地に8人天を張った。8人天は大きくて快適だ。設営後、ひと休みして岩場に行く。足慣らし、藤原トップで一般右を登る。伊東はフライで登った。他の皆はセカンドで登り、アプザイレンで下降。みなが下りている間に伊東は左ルートを登って最後に下りる。これで今日の足慣らしは終了。天幕に戻り、豪快なすき焼きを囲む。就寝前に外に出てみると、吉田の街の灯が、暗い下界にチカチカと、きれいに見えた。三つ峠一年生岩登り合宿の夜はふけてゆく。明日もいい天気だろう。はるかな星に向かって、歌を唄っていい気持ちになった。大谷のヨーデルが夜空を渡っていく。

 

3月1日 晴れ

起床(6:00)  屏風岩右フェース岩登り(8:00~12:20)~昼食~岩登り(14:30~17:30)

 

 朝、晴れたが風が強い。登山道を行くハイカーに夢を破られた。丁度6時ごろ、TUSAC CALLが聞こえる、岸さんだ。CALLを返して、こちらも起きだして、朝食の用意。15分ほどして岸さん到着。朝飯を食べて、また岩場に向かう。今日はパーティーを3つに分ける。伊東、木邨、藤原と岸、益崎、それに大谷、大坪。

 

午前 伊東パーティー 藤原トップでサンドイッチまで2ピッチ登り、木邨、藤原はセカンドで第一クラックを登った。伊東はオーネザイル、第3バンドに出て、伊東トップで権兵衛チムニーを登る。ハーケンはよく打ってあるが、カラビナが足りなくなって難渋した。だいたいバックアンドフットで登れる。木邨がセカンドで登り、藤原は一般ルートをフライで登った。岸パーティーとともに40mのアプザイレン2回、20mのアプザイレン1回で下まで下りて、午前は終わり。40mのアプザイレンはなかなか豪快だった。

岸パーティー 一般右、左、サンドイッチなど

大谷パーティー 一般右、十字クラック、サンドイッチ、20番クラック

 

午後 伊東トップで一般左、3人上がって、伊東、大谷は下降し、k2ルートを登る。アブミの連続使用、ハーケンはよくこれだけ打ったと感心するぐらい、ベタベタ並べて打ってある。大谷はアブミに恐れをなしたか、遠慮して登らなかった。それで残したアブミをアプザイレンで回収した。その間に退屈した益崎は岸パーティーに入って十字クラックを登った。

岸パーティー 一般左、一般右の右、十字クラックなど。

藤原パーティー 一般右、地蔵ルート、右ルートの右

 

天気も良く、ほかに誰もいない岩場、富士を眺めて、暖かい春の日を浴びて、岩登りを楽しむ、絶好の日和だった。天幕の中は今夜もにぎやかだ。1年生同士の歓談が夜遅くまで続く。中沢もやってきて全員がそろう。就寝はゆっくりして21時。

 

3月2日快晴

起床(6:30) 取付き(8:30)

 

午前の部、パーティー伊東、大坪、トップは伊東、右ルートの右、昨日岸さんが開拓したルート、朝でもあり案外悪く感じる。途中でハーケンを3本打つ。そのうちの2本は利かなかったので、同一箇所に重ねて打った。大坪はバランスが悪く、なかなか登れない。悪いところで長いこと止まったりしていたので大分消耗したようだった。その先は第一クラック、取り付きが少し悪いが、上は楽だ。大坪はやはり取り付きで引っかかって、結局登れず、サンドイッチを登った。その上は一般ルートを登って踊り場に達し、伊東は20番と19番クラックの間のフェイスを登った。フィンガーホールドばかりで細かく悪いところだが、快適なバランスクライムを楽しめる。それで終了、アプザイレンで下降する。

(他パーティーの行動は略)

 

午後の部(14:30~17:50)

天幕へ帰ると池戸氏が来ていた。午後は伊東、岸、木邨のパーティー、トップ伊東で左ルートを登る。木邨も上がったところで、岸、木邨と別れる。その後岸氏がK2ルートを登って、2人は先に下山した。伊東は藤原と組んでクーロアールを登った。出口が少し悪いけれど、凹角なのでつっぱって登れる。アブミは使わなかった。2人上がってから第2バンドまでダウンクライムし、十字クラックの上からアプザイレンで下りる。それからまた十字クラックを登った。革の手袋をしていると、手を遠慮なくクラックに突っ込めるので、くさび止めがよく利いて楽に登れる。今日は登ったり下りたり忙しい。もう大体のルートは登ってしまった。明日は休日なので人が多いだろうし、さっさと帰ろうということになる。毎晩星が空を埋める。毎晩歌を歌って過ごした。

 

3月3日晴れのち曇り

起床(6:30) 取付き(8:30)~終了(12:30) 撤収下山(15:00)~三ツ峠駅(16:40)

 

今日は藤原、大坪と組む。トップで左ルート、第1バンドから上は大坪は別行動。丁字クラックを登る、大分馴れてきて調子がいい。第2バンドから上は特に名のついたルートではないが、丁字クラックの真上の狭いクラックをもつフェイスに取り付いた。下がハングで切れているので高度感が出て、いい気分だ。調子がいいのでこういうところも登れる。第3バンドより上は一般ルート、踊り場に出て19番クラック右の小さなフェイスを登った。ここも細かいが3度目なので落ち着いてバランスをとって登れる。藤原は19、20番クラックの間のフェイスを登った。最後に伊東は池戸パーティーのセカンドとして権兵衛チムニーを再び登る。セカンドなのでぐいぐい登って、あっという間に登り切った。おかげで息が切れた。全員踊り場に集まって、頂上を踏んで天幕に戻った。昼飯を摂り、ゆっくり撤収して下山する。今日は他に人も多く、あまりいい気分じゃなかった。天気も下り坂だし、ちょうどいい具合だ。三ツ峠駅に着いた頃には雨も降りだし、愉快だったこの山行のしめをくくった。